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 番外編1・気持ち(原稿用紙11枚分)
 *昇&アリア

 ――兄貴、俺自信がないよ。

 昇は運転しながら、助手席にいる、熱で少しもうろうとしたアリアを、横目でちらりと見てため息をついた。

 いつもはするりと自分の腕を通り抜けて手に入らない存在のアリアが、今は熱で弱り、自分が守ってやらないとならない状態で直ぐ側にいる。普段接している時も、小柄で線が細い女性のような少年に感じていたが、熱で上気しているアリアは色っぽく悩ましげに見えてしまう。

 ――アリアを抱きしめたい。愛している。

 病人に対して不謹慎と思いつつも、その想いが頭から離れない。

 夜遅く、新雪が降り積もった山道を、昇の車はのろのろと進んでいた。

「本当にこの道でいいのか?」

「多分……」

 ――アリアにはかかわるな。泥棒を生業にしているのだから、下手をすればお前も犯罪に加担する羽目になる。

 双子の兄で刑事の十無から再三忠告を受けていた。

 だが、アリアが北海道に行くと聞き、昇は探偵業をほったらかし何かと理由をつけて尾行し、強引について来た。そして、アリアがいつもより口数が少なく、熱があることに昇が気づいたのは、山道に入ってからだった。

「おい、寒くはないか?」

「大丈夫」

 コートの襟を立て、首をすくめたアリアが、かすれた声で弱々しい返事をした。

「街に引き返して病院へ行ったほうがいいんじゃないか」

「ただの風邪だから直ぐ治るよ」

「そこまでしてそのアジトに行かないといけないのか?」

「……」

 返答は帰ってこなかったが、昇はそれ以上聞き返さなかった。アリアがそこまでして行くということは、ヒロとの待ち合わせだと簡単に想像出来た。

 雪も降り始め視界も悪くなり、一層車はゆっくり進むしかなかった。山間の道には既に民家はなく、街頭のない道に路肩があることを指し示す反射板の標識だけがサーチライトに照らされ光っていた。

「悪い、俺雪道に慣れていないからあまりスピードは出せない。でもなるべく急ぐから着くまで頑張れよ」

「うん」

 アリアはいつものサングラスをかけていて、表情はよく分からないが、額に汗がにじみ、熱が上がってきているようで、昇は気持ちが急いた。

 降り続く雪の中に、ようやくそれらしき建物が昇の視界に入った。

 小さなログハウスで、屋根にはどっしりと雪が積もり、ドアも雪に埋もれていてすぐには入れそうもない。

「くそっ、雪が深くてだめだ、アリア、ここで待っていろ」

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