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氷の唇13
「とにかく、私を一人にしておいて。今はただ、眠りたい」
強力な睡魔が襲い、アリアは瞼を開けていられなかった。
「じゃあ俺、また来るから。大事にしろよ」
昇は覚えていないとはいえ、自分のとった行動が気恥ずかしくなったのか、そそくさと逃げるように部屋を出ていった。
「十無も、仕事に戻りなよ」
「俺の仕事は、おまえを張り込むことだ」
「じゃあ、マンションの外でどうぞ。今日はもう、私は何処にも動かないから」
「そんなに体が辛いのであれば、病院へ行ったほうがいいぞ。俺が送ってやろうか?」
アリアは冷たく言ったのだが、十無は優しく声をかけてくる。
「いいから、放っておいて!」
アリアは寝室へ行こうと、起き上がったのだが、また頭がくらくらした。
「おい、大丈夫か?」
ふらついたアリアを十無が支えた。
「私に近寄らないで」
腕を大きく振ったのだが、無駄だった。
次の瞬間、アリアは十無に抱きかかえられていた。
「歩けないんだろう? 寝室まで俺が連れて行く」
十無はその姿勢のまま、アリアと顔をあわせてしまった。
昇と同じようなリアクション。
アリアを見つめる熱を帯びたうつろな瞳。
「十無?」
声をかけても、やはり反応はなかった。
十無はアリアを寝室へと運び、そっと寝かせてくれたのだが、瞳はうつろなままだった。
――十無も、意識が飛んでいるの? やっぱり変になっちゃった?
こちらをじっと見つめる十無。
アリアは目をそらすにもそらせず、うつろな十無の瞳を不安な気持ちで見上げていた。
「アリア、愛している……」
「十無?」
「誰にも、邪魔はさせない」
――やっぱり、十無どうかしちゃったんだ!
「愛している。あなたのその唇がほしい、あなたの全てを俺に……」
十無は、ベッドの横にひざまずき、アリアの手の甲に口付けた。
男だと思っている私に対して、普段から無口な十無が、絶対に言わないような台詞。考えられない行動。
――どうしたらいい?
突然アリアの頭の中の霧がすうっと晴れた。
そして、アリアの脳裏に、昨晩の出来事が鮮明に蘇ってきたのだ。
その口をふさいで
私の言葉をお聞きなさい
じっと耳を澄まして
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