[PR]
子育てママさんへ:3年毎に15万円うけとれる医療保険?
氷の唇14
忘れないで
きっと忘れないで
あなたに捧げる私の力。
ひと時、その力で愛しい人を手に入れて。
私のように、彷徨わぬように。
私はシャナン。
あなたと同じ、愛に彷徨う者。
吸血鬼の私には叶わぬ夢でも。
忘れないで……
「吸血鬼……」
その言葉が口をついた。
――では、この不思議な現象は彼女のせいなのか。
魔力とでも言うのか。こんなことが本当に?
しかし、アリアは悠長に考えているどころではなかった。
十無が手の甲に口付けたままじっと動かない。
――十無は好きだけれど、こんな人を操るようなこと、嫌だ。
「十無、お願いだから目を覚まして。私はいつものあなたが好き」
アリアは祈る思いで、自分にひざまずく十無を抱き締めた。
「アリア……あなたの気持ちを手に入れることができるのであれば、私は何を犠牲にしてもいい」
十無の優しい声。優しい抱擁。
でも、これは本当の十無じゃない。
「あなたのその唇を」
十無は硝子細工でも扱うように、そっとアリアの頬に手を掛けた。
偽りの十無。
そうわかっていても、アリアはその手を振り解けなかった。
――もうこのまま、どうなっても構わない。
「十無……愛してる」
唇が触れそうなほど近づいた時、アリアは瞳を閉じて十無に囁いた。
十無がびくりとしたようだった。
一瞬、動きが止まり、アリアに辛うじて聞こえる、かすれた声で十無が囁いた。
「……好きだ」
唇が触れた。
今時の高校生でもしないような、触れるか触れないかのキス。
キスの後、アリアから離れて十無は俯いた。
先ほどとは十無の態度が違う。
「十無?」
アリアが十無に触れようと手を伸ばしたが、十無はそれを避け、あとずさった。
「俺、用を思い出した」
「十無?」
もう一度呼んだが、十無は顔をあわせないようにしたまま部屋を出ていった。
明らかに十無は正気に戻っていた。
――でもいつから? どうして戻ったのだろう?
まだ体はだるい。眠気で、考えるのもつらくなり、アリアはとさりとベッドに横になった。
[戻る]
[次へ]
Copyright(c) asami. All rights reserved