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氷の唇3
「
……あなたは?」
アリアは拍子抜けし、戸惑った。
――こんな真夜中に、女の人が一人で? この辺りには他に家はないはずだけれど。
「夜分すいません。この先で、車が雪に埋まってしまい、ここまで歩いてきました。申し訳ないのですが、一晩泊めていただきたいの」
抑揚のない、細い声。彼女は丁寧にお願いしているはずなのだが、態度には人を使い慣れているような、威圧感が感じられた。
「……わかりました。どうぞ」
この吹雪の中、女性を一人放り出すわけにも行かず、アリアは仕方なく女性を部屋へ招き入れた。
アリアはテーブルの上に放り出してあった札束を慌てて片付けたのだが、彼女はそれには目もくれず、ぼうっと立っていた。
暖炉の側に一人掛けソファを近づけ、彼女に勧めた。
「有難う」
彼女は軽く会釈をし、雪を払いながらフードを取った。
山荘の薄暗い白熱灯の明かりの下、彼女の優雅な動作が、古いモノクロ映画を見ている気分にさせた。
コートを脱ぐと、長く波打つ黒髪がするりと絹のように流れる。
白く透き通る肌に、海の底のような青い瞳が印象的だった。
十五、六歳の少女のようにも見えるが、落ち着き払った態度は、大人の女性を感じさせる。
――ハーフだろうか? 大理石のように冷たい感じの肌。まるで人形のよう。
「何か?」
彼女は、ソファに腰を下ろしながら、小首をかしげた。
アリアは、ついその美しさに見とれてしまったのだ。
「あ、いえ、外国の方ですか?」
彼女は何も答えず、ただ微笑んだ。
「これから、寝室のストーブに火をつけますから、寝室が暖まるまで、ここで暖まってください」
「有難う」
彼女はそう言って、ゆっくりと軽く会釈した。
――何者だろうか? 厄介なことになってしまった。明るくなったら、ふもとまで車で送ってあげるしかないか。
居間に続く寝室に行き、部屋のストーブに薪をくべながら、アリアは明日のことを考えた。
山荘は、居間とキッチンの他、寝室が一部屋あるだけだった。
彼女に寝室を使ってもらい、アリアは、居間の長椅子で仮眠をとろうと思った。
――どうせ、今夜はヒロが来るかどうかもわからない。居間でうとうとしながら待とうと思っていたのだから、彼女がいても同じことか。
アリアはそう楽観的に思い直した。
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